建築家としてのヴォーリズ

近江八幡の地で紡がれた、住まい手への心遣いに満ちたヴォーリズ建築。
この地を訪れると、住まい手の生活に寄り添った工夫の数々をヴォーリズ建築に感じることができます。

 
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設計指導するヴォーリズ

 
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当時の建築設計事務所の内部

建築

建築を「キリスト教精神の表現」と捉え、住む人、使う人のことを最優先に考えたヴォーリズ。彼が設計を行った建築は、教会・YMCA・学校・住宅・商業ビル・公共施設など国内外含め1600棟以上と言われています。
「ヴォーリズ建築」と呼ばれたそれらの中には、今もなお愛され続けているものも数多くあります。
1912年、池田町5丁目に土地約千坪を入手し、吉田邸、ウォーターハウス邸、ヴォーリズ邸、ダブルハウスやテニスコートなどが建設されました。これらの西洋館は、各々の個性を備えながら、米国のコロニアル・スタイルという共通の手法で建てられています。建築家としての最初の取り組みは1906年に計画された八幡YMCA会館ですが、本格的な動きは、1912年にヴォーリズ合名会社が設立されてから始まりました。
近江八幡市以外では、大阪、神戸、東京、長野などのビルの建設や学校建築も多く手がけています。学校建築では多くがミッション系の学校であり、校舎全体の設計から図書館・体育館などの設計も行っていました。その中には、明治学院のチャペルで満喜子夫人との結婚式を挙げたというエピソードも残っています。

 
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池田町洋館街のレンガ塀

特色

ヴォーリズ建築は「様式のない建築」と言われていますが、彼の建築には様々なところで日本の気候風土や住習慣に適合させる工夫がなされています。そこに共通しているのは、実用性に重きをおき、簡潔ではあるけれども豊かなデザインと親しみやすく包容力のある空間を有したものとなっていることです。ここに、依頼者の求めに応える奉仕の精神に貫かれたヴォーリズ建築の特質があります。
当時は手焼きでレンガを作っていたため、空気などが入ると膨らんだりくびれが出来たりしていました。ヴォーリズはそのような焼損じで不良品のレンガを建築材料として再利用し、塀などに活用していました。

 
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前田邸のステンドグラス

 
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ヴォーリズ建築に象徴的な“煙突”

他にも、緩やかで上りやすさを重視し、手摺にも配慮が行き渡った階段や、日の光がたっぷり入るように計算してつくられた大きな窓、家人が自然と集うように居間の中央に配置された暖炉があるなど、生活する人の健康を重視し、快適で居心地のよい空間づくりを第一に考えた設計になっています。

 
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ドアノブひとつにも使い手への気遣いとこだわりが見える

また、学校などの設計では、日々使う子どもたちのために階段や手すりを低くし、ぶつかっても大怪我にならないように丸みを帯びた作りになっています。ここにも、ヴォーリズの隣人愛の精神が全ての建築物に込められていることが伺えます。

 
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旧豊郷小学校の階段の手すり。
ウサギとカメの像は、いつまでも子どもの心に残る演出。